― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
とんと昔あったでん。
ほかほかと南の風が吹くあたたかい日に、村の若い者が二人して、春山へたきものきりに行ったと。
ひとりの男は山に消え残った雪をいじって遊んでいたが、もうひとりの男は疲(つか)れが出たのか、あおのけになってゴウゴウといびきをかいて眠ってしまったと。
はあ、もう起きるかと思って起きている男がのぞいて見たら、あぶが一匹、寝(ね)ている男の鼻の穴から飛び立って行ったってや。
ほうしてひとしきりどっかへ行って、またもどって来て鼻の穴の中へもざもざともぐりこんだと。
こりゃ、面白(おもしろ)いこともあるもんだと見ていると、男は目をさました。
「いや、おら、面白い夢を見たや。この峠の白いつばきの花を折ろうとしたらば、その下にかながめが埋(う)まっている夢だ。こんどお前と二人で白いつばきを捜(さが)して、そのかながめを掘(ほ)ろうや」
そう言って聞かせたと。
ところが、もう一人の眠らん男がこっそりその白いつばきを捜し当ててその下を掘ったら、ほんとうにかながめが三つ見つかったてや。やれ、よかったと喜んでその男は眠った男にしゃべったと。
眠った男は「どんげなかながめだか、ひとつおらにも見せてくれ」
と言うて見に行ったら、かめの底に『十(とお)のうち』と書いてあったと。
かめを三つ掘った男は字を知らんかったてや。
字の読める男が、さっそく白いつばきの下を掘ったらば、かながめが七つ出てきた。
男は、たいそうな金持ちになって一生安楽に暮らしたと。
これで つづきつばき まめそうろう。
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