お猿さんはなぜ爺さんの嫁をもらおうとしたんだろう( 10代 / 女性 )
― 長崎県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、むかし。
ある山里にお爺(じい)さんと二人の娘が住んでおった。
ある日、お爺さんが山へたき木取りに行ったら、猿(さる)が出て来て、
「これは山のものだから、おれのものだ。とってはだめだ」
というた。仕方がないのでお爺さんが別の枯(か)れ木を取ろうとしたら
「それもおれのものだ」
「あれもおれのものだ」
というて、一本もたき木を取らせてくれない。
挿絵:福本隆男
お爺さんが途方(とほう)に暮(く)れていると、猿が、
「爺には娘が居たな」
というた。
「ンだ、二人いた」
「ンだら、一人、嫁にくれたら、木、取っていい」
「そんなこと言われたって、お前(め)」
「いやか。いやならこのさき、ずうっとたき木、取らせねぇ」
「ンだら、一人をお前の嫁にやる」
お爺さんは、しょうがなくそういうた。
猿は喜(よろこ)んで、
「あれもとっていい」
「もっととっていい」
というて、拾うのを手伝ってくれたと。
お爺さんはたき木をかつぎ、猿はあとをついて、山を下りたと。
家に帰ったお爺さんが、姉娘(あねむすめ)に
「今日は、山に行ったら山猿(やまざる)が出てきて、たき木を取らせてくれなんだ。お前だちの一人を嫁にくれないと、これからはずっと取らせない、というので、嫁にやると約束をした。
お前、姉娘だもの、聞きわけて、山猿の嫁になってくれ」
というたら、姉娘は
「とんでもない。猿の嫁になんか、ならん」
というて怒ったと。お爺さんは
「それもそうだ。こうなりゃ、あいつを殺すほかはない」
というて、鉄砲(てっぽう)を持ち出し、今にも山猿を撃(う)ち殺そうとした。
そしたら妹娘(いもうとむすめ)が、
「まって、あの猿、じいっとこっちを見ている。約束を破(やぶ)るのも、まして殺すなんてとんでもない。私があの猿の嫁になります」
というた。
お爺さんが鉄砲をおろすと、猿は妹娘のそばにやってきたと。
お爺さんは、妹娘の嫁入り支度(じたく)もしてやることが出来ないので、せめてと思うて、肥前瓶(びぜんがめ)を持たせてやることにした。
猿はその瓶(かめ)を背負(せお)うて、妹娘はそのあとをついて、山を登って行ったと。
猿と妹娘は、お爺さんがたき木を取っていた山を越(こ)えて、奥山へ、奥山へ、行くが行くが行くと、深い深い谷川があって、こっち側と向こう側とを一本のツタが架(か)かっているだけだ。猿が、
「この谷川の向こうが、おらの家がある山だ。まず、この背中(せなか)の瓶を向こうに持って行くから、お前はここに居てれ。また戻ってきて、今度ぁ、お前を背負(おぶ)って向こうへ連れて行く」
こういうて、猿は肥前瓶を背負うたまま、谷川に架かった一本のツタを渡りはじめた。
挿絵:福本隆男
ところが、まんなかあたりで背中の瓶がずれた。猿は手足を滑(すべ)らせて、あっという間に谷川に落ちていった。瓶に水が入って、沈(しず)みながら流されて行ったと。
そのとき、猿は、
「猿侍(さるざむらい)が流るる命はおしくはないが、後に残る乙姫(おとひめ)が泣くが悲しい」
といいながら、流されていったと。
妹娘は、このありさまを見て、家に帰り、幸せに暮らしたと。
こんかぎりのむかし。
お猿さんはなぜ爺さんの嫁をもらおうとしたんだろう( 10代 / 女性 )
お猿さんきを拾わせてくれないなんて意地悪だよぉ
すごい!( 10代 / 男性 )
衝撃のラストに「あっ!」と思わず声が出てしまいました( 10代 / 男性 )
とてもおもしろいお話でした!( 10代 / 男性 )
猿が最後にかっこいいこと言ってるのが可笑しい( 40代 / 女性 )
ひどい話では…( 30代 / 女性 )
むがし、むがし。山形の庄内さ向かって行く方さ、炭焼きしたっだ よぞう っていう男いであったけど。そのよぞう、大変に働ぎのええ人でな、仲間の男と二人して、春にもなったんだし、山さ稼ぎに行ったど。
「猿の嫁」のみんなの声
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