民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 面白い人・面白い村にまつわる昔話
  3. 爺様と婆様の話

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

じさまとばさまのはなし
『爺様と婆様の話』

― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
採集 丸山 久子 / 佐藤 良裕
整理 六渡 邦昭

 昔、あったず。

 ある所ね、爺様(じさま)と婆様(ばさま)あったず。
 その家の裏(うら)に大き木ぃあったず。
 あるとき、又八(またはち)ず人ぁ来て、
 「家の裏にある、けやき売(う)れ」
たへで、婆様、
 「良(え)え」
て、売るごどねしたず。 
爺様、年とって耳ぁ聞けながったずども、木ぃ、ぎゃりぎゃりど転んで、どつんと地響(じひびぎ)ぁしたへで、
 「婆、婆、今の地響ぁ、何の音でぇ」
たへで、婆様、家の裏の方指さして、
 「木ぃ売った」

 
爺様と婆様の話挿絵:福本隆男
 
でば、
 「なんの木ぃ売ったぁ」
たへで、婆様、我のわきの下の毛一本抜(ぬ)えで、火で焼(や)ぇで見せだば、
 「ははあ、けやき一本売ったのが。だれさ売ったぁ」


たへで、婆様、流しさ行って、鉢(はち)持って来て、爺様の前さ伏(ふ)せて、それ、またいで見たへだば、
 「ははあ、又八さ売ったのか、なんぼね売ったぁ」
たへで、指二本出したば、
 「二百両がぁ」
たへで、小指二本出したば、
 「二十両がぁ、なんでそったね安ぐ売ったぁ、又八にだまされで安ぐ売ったな」
 たへで、婆様、ぐるっと腰巻(こしまき)めくって尻(けつ)出して、爺様さ突き出したば、
 「ははぁ、そうだったか。木ぃに洞(ほら)入ってらったのが。へでぁ安いはずだ」
たず。
 
 これでどっとはれぇ。

「爺様と婆様の話」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

爺様と婆様の話し方が面白い( 10歳未満 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

狼と狐と唐獅子と虎の競争(おおかみときつねとからじしととらのきょうそう)

 昔、昔、あったと。  日本(にっぽん)の狼(おおかみ)のところに、天竺(てんじく)の唐獅子(からじし)から腕競(うでくら)べをしよう、といって遣(つか)いがきたそうな。日本の狼は、狐を家来にしたてて、天竺へ行ったと。  天竺では唐獅子と虎が待っていた。

この昔話を聴く

大沼の主と娘(おおぬまのぬしとむすめ)

むかし、あるところに代々続いた大層な長者があったと。あるとき、長者はふいの病であっけなく死んだと。あとには嬶様(かかさま)と娘が残された。ある朝、嬶…

この昔話を聴く

屋根ふき作戦(やねふきさくせん)

 とんとむかし。高知県土佐の幡多の中村に泰作さんというて、そりゃひょうきんな男がおったそうな。  人をだますのが好きで、人をかついじゃ面白がりよったと。  ある日のことじゃった。  泰作さんは屋根にあがって、ひとりで屋根ふきをしょった。  ほいたらそこへ、近所の若いしらが二、三人で通りかかったちゅうが。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!