― 石川県珠洲郡 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
能登半島(のとはんとう)一番先っぽに狼煙(のろし)という所があるがの、この狼煙の沖に暗礁(あんしょう)がありますだ。海岸から四里(よんり)ばかりもありまするが、ひき潮どきには岩が顔を出すんですじゃ。
この暗礁にまつわる話で、こんなのがありまする。
昔、狼煙に一人の漁師がありました。
漁師は毎晩、雨もいとわずに、その暗礁まで船を出して、夜のサバ釣りをしていましたがの。そして、もうけたお金で嫁さにうまいものを食べさせて喜んでおりましたじゃ。
ところが、ひどい嵐の夜も、決して休まなかったので、そのことが、かえって嫁さに疑(うたが)いを持たせることになりましたんじゃ。夫に誰かいい女ごでも出来たのではないか、思うたんですな。
それで、嫁さは毎晩のように、
「おらも、連れてって呉(く)れ」
とせがむのですがの、漁師は、
「女郎(めろう)の行くとこじゃ、ないてや」
と、ことわるのですじゃ。
こうなると、嫁さはますます深う疑(うたぐ)うばかりで、とうとうある晩、船の中へ身を隠(かく)して、夫が船を出すのを待っていたんと。
漁師はそれと知らずに、船を出したわけですわ。
間もなく、いつもの暗礁に船をつけると、漁師は釣ナワを手にするために、身をかがめましたのじゃ。
するとそのとき、かくれていた嫁さが、ヒョッコリ立ちあがって、
「あんた」
と、夫に声をかけなさった。
ところが、あんまりだしぬけだったから、漁師は、てっきり化け物だと思いこんだんですな。すばやく、出刃包丁(でばぼうちょう)をとりあげて、嫁さを差し殺してしまいましたのじゃ。
それから、急いで家へ帰りましたがの、嫁さがおりませなんだ。
「さては、あいつがそうやったか」
気のついたときは、もうあとのまつり。
漁師は、大切なかわいい嫁さを殺したのがもとで、気ちがいになりましたんじゃ。
そして、あげくのはては、同じ暗礁の、近くの海中に身を投げてしまいなすった。
今でも、この暗礁を嫁礁(よめぐり)と言っておりまする。
それきりちょ。
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むかし、あるところに富山(とやま)の薬屋があった。 富山の薬屋は全国各地に出かけて行って、家々に置き薬していた。一年に一回か二回やって来て、使った薬の分だけ代金を受け取り、必要(いり)そうな薬を箱に入れておく。家の子供(こども)は富山の薬屋がくれる紙風船を楽しみにしたもんだ。
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「嫁礁」のみんなの声
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