亀に助けられる、小橋川大和の話が沖縄の民話にもあります。船から海に落ちた所を、亀とフカ(鮫)に助けられました。( 40代 / 女性 )
― 岐阜県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、ある家の亭主(ていしゅ)が、
「頭が痛(いた)い、頭が痛い」
といって寝(ね)ていると、近所の人が来て、
「亀の生血(いきち)を飲んだら治るだろう」
と、教えてくれた。
そこで、家の者が八方手配りして、海亀(うみがめ)を一匹捕(と)って来たそうな。
奥さんが家の者にその海亀を持たせて亭主の寝床(ねどこ)へ行き、
「ようやく海亀が手に入りました。さっそく生血を採(と)りますから、頭の痛いのはじきに治りますよ」
というた。
そしたら、寝床でふせっていた亭主は、
「命の惜(お)しいことは人間も亀も一緒だ。見ればその亀、目から涙(なみだ)を流しとる。あわれじゃ。その亀は逃(に)がしてやってくれ」
というた。奥さんは、
「せっかくの亀ですが、そうおっしゃるのなら」
というて、家の者と海辺(うみべ)りへ行って、その海亀を放してやったと。
海亀はゾロリ、ゾロリ歩いて、海の中へ潜(もぐ)って行ったと。
その日から亭主の頭痛は、うす紙をはぐようにゆっくりゆっくり治っていき、やがて、床上(とこあ)げしたと。
それから何年も経(た)って、亭主は用事で四国へ行くことになったと。
船に乗って海を渡(わた)っていたら、沖(おき)で船が進まなくなった。びくともしない。
すると船頭が、
「この船に乗っている者の中に、海の主(ぬし)に見こまれた者があるようだ。それで船が動かんのだから、だれが見こまれているのか、試しにめいめい手拭(てぬぐい)でも何でも出してくれ」
という。
そこで一同が手拭を出し、船縁(ふなべり)から海へ落とした。すると、ほかの人の手拭は沈(しず)まないのに、その亭主の手拭だけが沈んでしまったと。
船頭は、
「どうやら、お前さんが主に見込(こ)まれているようだ。悪いがこのままお前さんをこの船に乗せておくことは出きん。嫌(いや)でもなんでもここで船から下りてもらわにゃならん」
というて、亭主の腕(うで)をとったと。
亭主があとじさりすると、他の乗客が亭主の周りにじりじりと寄(よ)ってきて、船縁へつめ寄った。
亭主は、船にしがみついても殺(ころ)され、海に飛び込んでも死ぬ、これがおれの運命か、と覚悟(かくご)を決めて、自ら海に飛び込んだと。
そしたらなんと、一度は海に沈んだもののすぐに浮(う)いた。大きな岩のようなものの上に乗っかって、そのまま海岸まで無事に運ばれたそうな。
大きな岩のようなものは、大きな海亀だったと。
命をたすけてもらったあの時の海亀が恩報(おんほう)じに運んでくれたのだったと。
亭主を乗せていた船は、それからすぐに船火事がおこって、乗っていた者は皆(みな)死んでしまったそうな。
しゃみしゃっきり鉈柄(なたづか)ぼっきり。
亀に助けられる、小橋川大和の話が沖縄の民話にもあります。船から海に落ちた所を、亀とフカ(鮫)に助けられました。( 40代 / 女性 )
素敵なお話でした。( 50代 / 女性 )
優しかった( 10歳未満 )
面白いです
明治から大正の頃のようじゃが、池の集落に、宮地というお爺が居って、いってつ者であったと。 楽しみといえば、中央の池に出て、鯉や鮒、鰻などを釣ってきて、家の前の堀池で飼い、煮たり焼いたり酢にもして晩酌の肴にしていたそうな。
「亀の恩返し」のみんなの声
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