やっぱり誠実さが1番( 30代 / 男性 )
― 福岡県宗像郡 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところに貧乏な爺(じい)と婆(ばあ)とが暮らしておったそうな。
ある年の暮れ、爺は山へ行って木を伐り、それで餅(もち)を搗(つ)く杵(きね)を作って町へ売りに行ったと。
「餅搗き棒はいらんか
餅搗き棒はいらんか」
と、町を何度も何度も往ったり復たりしたけれど、ひとつも売れんかったと。
晩方(ばんかた)になって、戻り道をとぼらとぼら歩いていたら川の橋に差しかかった。
ふと思いつき
「竜神様に餅搗き棒一本、献上します」
といって、川の中に杵を投げ入れたと。
沈んでゆく杵を見ながら、
「したども、餅搗き棒は伐ったれど、年は何でとろうや」
とつぶやいたら、
「米や銭でとりゃれ」
と、声がした。
不思議に思ってキョロ、キョロしてみたが誰もおらん。
「気のせいかな」
爺は今度は橋の下へおりて捜したと。汀(なぎさ)を捜していたら一匹の亀がいた。
「まさか、これがな」
と思いながらも、試しに、
「餅搗き棒は伐ったれど、年は何でとろうや」
といってみた。すると、亀が、
「米や銭でとりゃれ」
と答えたと。
「こりゃ、また、物を言う亀とは珍しい」
爺は亀を懐に入れて分限者の所へ行ったと。
「珍しいものを獲りましただ。ちょいと見てくんなせ」
懐から亀を出して、
「餅搗き棒は伐ったれど、年は何でとろうや」
といったら、亀は前より大きい声で、
「米や銭でとりゃれ」
と答えた。
「これは、これは、年の暮に誠にめでたいことよ。思わずぬ耳福をさせてもろうた」
分限者は大層喜んで、たくさんのお金を包んでくれたと。
爺は、亀とお金を持って帰り、婆と二人で
「よかった、えがった」
といっていたら、そこへ、隣りの欲深爺(よくふかじい)が来たと。
欲深爺は、二人から話を聞くと、何としてもその亀が欲しくなった。
何だり、かんだり言って、無理矢理借りて、早速、別の分限者のところへ持ち込んだと。
したが、亀は、うんともすんとも言わん。
「人を詐(いつわ)るのもたいがいにしろ」
分限者は、カンカンになって怒ったと。
欲深爺は、恥はかくし金儲けは出来んし、腹が立って、腹が立って、途ちゅうで亀を殺して捨てたと。
次の朝、爺が亀を返してもらおうと欲深爺の家に行ったら、
「あれは、物をいわなかったから殺して捨てた」
という。
爺は悲しんで悲しんで、捨てた場所へ行って死骸(しがい)を持ち帰り、家のカマドの側(そば)に埋めてやったと。
ニ、三日したらそこから筍(たけのこ)が生え、ずんずん大きくなって、天井を抜き、雲をも通り、天道様の金庫を突き破ったと。
「あれよ、あれよ」と爺と婆が上をながめていたら、天から、
「爺、婆、早くムシロを敷け」
と声がした。
二人は、あわててムシロを敷いたら、天より、金銀小判がザンザラン、ザンザランと降ってきて、小山のようになったと。
その音を聞いて飛び出して来た隣の欲深爺と婆は、うらやましくてならない。
また亀の死骸を借りて、カマドの横に埋めたと。筍が生えて、大きくなって、天に届いたと。そしたら、天から、
「早くムシロを敷け」
と声があったので、あわてて敷くと、天から糞汁(ふんじる)が滝のように降って来たと。
欲深爺と婆は、糞山(くそやま)の中に埋もれて死んだと。
筍は、天の糞倉(くそぐら)を突き破ったんだと。
それぎんのとん。
やっぱり誠実さが1番( 30代 / 男性 )
昔、昔。一人の山伏(やまぶし)居(え)だけど。何時(えじ)だがの昼間時(じき)、一本松の木の下歩いて居たけど。ちょこっと見だば、その木の根っコさ小さな狸(たぬき)コ昼寝(ひるね)して居だけど。
とんと昔の話じゃったそうな。 あるところに女の子が出来た。名前をお福(ふく)とつけた。村中(むらじゅう)でも誰(だれ)にも負けない器量好(きりょうよ)しだったと。
「大歳の亀(隣りの爺型) 」のみんなの声
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