民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 言葉の聞き違い・言葉遊びにまつわる昔話
  3. 一反三百

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

いったんさんびゃく
『一反三百』

― 山形県 ―
再話 清野 久雄
語り 井上 瑤

 むがしあったけど。
 ある家に姑(しゅうとめ)と嫁がいて、大変仲が悪くて、どうしたら姑に勝てるか、嫁に勝てるか、て、考えでいたけど。
 
一反三百挿絵:福本隆男


 あるとき、寺の和尚さまさ聞きに行ったけど。
 まず姑婆さまは反物(たんもの)を一反(いったん)持って、
 「和尚さま、おら家の嫁、きかねさげ、どうしたらえがんしょ」
て聞いたば、和尚さまは、
 「嫁の年はなんぼがの」
 「はえ、十八だぞし」
 「そんなら、嫁が何か行ったらば、”十八念仏なんまいだ” て、言えばええんでねが」
て、いったけど。
 ありがどがんす、って反物一反置いで、家さ帰って来たけど。


 翌日、嫁もまだ、こそっと銭三百文(ぜにさんびゃくもん)持って、
 「和尚さま、和尚さま。おら家の姑婆さまきかねさげ、どうしたらえがんしょ」
て、聞ぎにいったけど。
 したば和尚さま、
 「そういう人ごそ、なんまいだ」
て言えて、教えてくれたけど。


 次の日、こんどは聟(むこ)も、
 「和尚さま、和尚さま、おら家の姑婆さまど嫁が、なんだて仲悪りぐで困ったもんだが、どうしたらえがんしょ」
て、聞きに行ったけど。
 したば和尚さま、
 「どっちもこっちもなんまいだ」
て言えて、教えでぐっだけど。


 家に帰ったば、姑と嫁は一所懸命(いっしょけんめい)、
 「十八念仏なんまいだ」
 「そういう人ごそ、なんまいだ」
て、いいあっている。そこで聟は、
 「どっちもこっちもなんまいだ」
て加わって、家の中ワンワンて言って、なかなかおさまりそうもない。らちあかないので、三人で和尚さまのところへ行ったけど。
 和尚さまさ三人が、
 「十八念仏なんまいだ」
 「そういう人こそ、なんまいだ」
 「どっちもこっちもなんまいだ」
とて訴(うった)えて、さわがしいのだと。お手あげとなった和尚さま、
 「一反三百ただぺろりん」

 
一反三百挿絵:福本隆男

 こういうて、四人で本堂をぐるぐるまわっていだけど。
  
 とっぴんからりんねけど。

「一反三百」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

和尚さんの言ったことを、本気で信じた三人が、同時に念仏を唱えているなんて面白すぎます。( 10代 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

唐土の虎(とんじのとら)

むがし、あるところに爺(じ)っちゃと婆(ばんば)ど居てあったさんべんた。二人暮(く)らしていた訳(わけ)だ。 家も貧乏(びんぼう)なって、天井(てんじょう)から雨もむるし、馬こもいてあったぁじ、売ってしまっで、今は居(え)ね訳だ。

この昔話を聴く

猪狩り正右衛門(ししがりしょうえもん)

昔、日向の国、今の宮崎県西都市に正右衛門という狩人があったげな。正右衛門は猪撃ちの狩人でな、山に入ると猪の気配を感じるじゃろか、犬の放しどころに無駄がなかったちいうぞ。

この昔話を聴く

親子と馬(おやことうま)

むかし、あるところにお父(とう)と息子が住んであったと。 あるとき、馬を一頭、町へ売りに行くことになったと。お父と息子は、さてどうやって馬を連れて行こうか…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!