民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 伝説にまつわる昔話
  3. 大師講のむがし

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

たいしこうのむがし
『大師講のむがし』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 野村 敬子
整理・加筆 六渡 邦昭

 むがし、むがし。
 お大師(だいし)さんじゃ(では)、うんと貧乏(びんぼう)でありあんしたど。ぞよぞよど子がいで、なんと十二人の子持ちでしたどな。しだもんで、なんとも育てきれないもんでしたど。
 秋になって、収穫祭(しゅうかくさい)が来ても、刈上(かりあ)げの餅(もち)搗(つ)ぐことも出来ね。
 子供たちぁ腹減らしているもんで、そんで吹雪(ふぶき)の吹くよだ頃、こっそりど、人の物ば盗(ぬす)みに出がげでな、畑の大根ば抜いて来たなだど。小豆(あずき)ど米(こめ)も盗んで来だなだど。 

 
 しだら、天の神様、吹雪にして、うんと雪ば降らせでな、雪道のお大師さんの歩いだ足跡(あしあと)ば隠(かく)してくださったなだど。
 その頃になるというど、今もって、大師こ荒れ(だいしこあれ)言うて、びゅうびゅう吹雪く日あるなだけど。 
 そのお大師さん、十二人の子ども達さ、うんと薄い小豆粥(あずきがゆ)を作って、食べさせだなだど。それが十一月三日ですと。次には少し金(かね)が入って、十二日にはぼだ餅が作れるくらいになったなだど。次にはようやく本当の餅ば作って、子供達に食わせる事が出来たなだど。神様が守っていだなだべな。
 んださげ、十一月三日は、今も小豆粥、十二日にはぼだ餅、二十三日は餅を搗いて大師講どいうてお祭りするなだど。

 どんびんすかんこ、ねっけど。 

「大師講のむがし」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

極楽を見たという話(ごくらくをみたというはなし)

昔あるところに信心(しんじん)深い婆(ば)さまが良くない息子夫婦と暮らしてあったと。婆さまが齢(とし)とって働くことが出来なくなったれば、息子夫婦は…

この昔話を聴く

文吾と狐(ぶんごときつね)

昔、ある村に文吾ゆうて、えらい、負けん気な男がおったそうじゃ。ある日、村の衆が文吾にこうゆうたと。「近頃(ちかごろ)、下の田んぼに悪戯(わるさ)しよる狐が出て、手がつけられん。何とかならんもんかいの」

この昔話を聴く

みそさざいは鳥の王様(みそさざいはとりのおうさま)

むかしむかしの大昔。森の奥で鳥の鷹(たか)たちが大勢集まって、酒盛(さかも)りを開いて、賑(にぎ)やかに飲んだり歌ったりしていたと。何でも、鳥の王様…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!