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ままこともぐら
『継子ともぐら』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかしむかし、ある村に百姓家(ひゃくしょうや)があって、そこのお母ちゃんが継母(ままはは)であったと。
 田植えどきになったが雨の一粒(つぶ)も降らない。田んぼは干(ひ)あがったまんまだと。
 ずうっと遠くに大きな沼があるのだが、いつもの年よりも水かさが少なくて田圃(たんぼ)へ水が流れて来んのだと。
 桶(おけ)で水を汲(く)んで来ようにも、大人が朝星(あさぼし)夜星(よぼし)で両天秤(りょうてんびん)を運んで何十日もかかるくらいの仕事だったと。
 ある日、お父っつぁんが用事で何日か家を留守にした。そしたら継母が継子(ままこ)に、 

 継子ともぐら挿絵:こじま ゆみこ
 「お前、田んぼに水掛けてこい。水掛けて来ねと飯(まま)食わせねぞ。家さも置かねぞ」
というた。
 継子は継子なもんで仕方なく水掛に行ったら、やっぱり一滴の水も流れていない。
 遠くの沼へ桶もって汲みに行っても、小っさい子供だもの、何ほどのことが出来る?
 「おかあちゃんのいいつけだけど、困ったなあ」
 と、途方(とほう)に暮れていたら、もぐらがいま少しで蛇(へび)に呑(の)まれようとしているのを見つけた。


継子ともぐら挿絵:こじま ゆみこ
 「こらっ、弱いものいじめすな」
というて、継子は棒切れに蛇を巻きつかせて遠くに投げて捨てた。
 助けられたもぐらは、何べんも頭さげながら、土の中へ入って行った。
 少したったら、今度は別の大っきいもぐらが出て来て、

 

 
 「ただいまは子供を助けてもらって、どうもありがとうございました。ところで、何か気がかりのある顔をしているようですが、心配ごとでもあるのでしょうか」
というた。継子は、
 「いや、実は、おかあちゃんに田さ水掛て来ねと、家、追い出すだの、飯くわせねって言わって来たけども、俺らには手に余って困っているんだ」
と正直に言うた。もぐらの親は、
 「そんなこと簡単だ。おらだちの仲間集めて、みなして、沼から田圃まで穴あけて、水の道作って水出してあげますから、そこへ腰かけて待っていらっしゃい」
というと、出て来た穴に顔差し入れて、
 「もぐら一族一統(いちぞくいっとう)、みな出てこーい」
と呼びかけた。そしたらなんと、あっちからこっちから、土がもこもこ盛り上がって、たあくさんのもぐらたちが出て来た。親もぐらが、
 「この田んぼに水を引く穴を、むこうの沼まで掘り進みたい。理由はこれこれこうだ」
 

 継子ともぐら挿絵:こじま ゆみこ
 というたら、もぐらの一族一統、何列かに並んで土に潜(もぐ)り、一斉に掘り進んでいった。
 ほどなくして、もぐら穴を通じて、田圃へ水がどおっと流れ込んできた。水はたちまち、田をまんまんとみたしたと。
 継子はもぐらたちに礼を何べんも何べんも言うて、家に帰った。そしたら継母が、
 「田さ水掛けてきたか」
と恐い顔していうた。
 

 
 「はい、掛けてきました」
 「嘘(うそ)いうでねえ。子供のお前に出来るわけねえだろうが」
 「本当です」
 「まだいうか、ほんなら行って見てくるど」
というて、行ってみたら、まんまんと田に水がかかっている。びっくりした継母、
 「あんな遠くの沼から、こんなに短い時間で水をひくなんて、神がかりでねえと出来ん技だ。神がついた子を俺いじめていたか」
とひとり合点(がてん)して、後悔したと。
 「いや、おれが悪かった」
というて、あやまって、それからは家中皆々仲良く暮らしたと。

 どんぴんからりん すっからりん。

「継子ともぐら」のみんなの声

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驚き

継子に蛇を追い払うような勇気があるなんてびっくりです。( 10歳未満 / 男性 )

感動

継子よかったね!!( 10歳未満 / 男性 )

感動

継子の優しい気持ちと行動が幸せな結果を招いた素敵なお話しでとても感動しました。継母も悔い改めて優しくなったので、めでたし。めでたしです。( 30代 / 女性 )

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感動

モグラのかぞくさいこう( 10歳未満 / 男性 )

感動

もぐらを助けた子どもの勇気がすごい。 蛇に食べられなくて良かった。( 10歳未満 / 男性 )

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