初めて知りました(^0^)
― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、ひとりの侍が旅をしていて、山の中で日が暮れてしまったと。
真っ暗な山の中を、あっち行き、こっち行きして、ようやく一軒の山家(やまが)が見つかった。
戸を叩(たた)いたら、中から、
「戸は開きますで」
と、爺(じい)さんの声がした。
戸を開けて家の中に入ると、侍は、
「今夜一晩だけ泊めていただけまいか」
と、頼んだと。
囲炉裏端で縄をなっていたお爺さんとお婆さんは、
「ええとも、ええとも、なあ婆さんや」
「はえ、はえ、困ったときはお互いさま」
「婆さんも、ああいっとります。こんなあばら屋で、よかったらば」
と、にこにこして招じ入れてくれたと。
侍はあったかいお粥(かゆ)をごっつぉになって、次の部屋に休ませてもらったと。
旅の疲れで、すぐに眠ったが、そこは侍、真夜中ごろ、お爺さんとお婆さんのひそひそ話に、ふと眼をさました。耳を澄ますと、
「明日(あす)はひとつ、半殺しがええべか、それども、お手打ちがええべか」
「江戸のお侍さんだそうだで、半殺しがええかも知んないな、お爺さん」
といっている。
さあ、侍はびっくりした。
「これは、山賊の家かもしれん。とんだところへ泊ったもんだ」
もう眠るどころではない。刀を抱いたまま布団の中でじいっと様子をうかがっておったと。
四方八方、油断なく気を配って、すっかり気疲れした頃、朝になったと。
「はて、襲(おそ)って来るのは夜(よる)の内(うち)かと思うたが……、さては、油断させておいて、不意をつく気だな。そうはさせるか」
侍は刀をいつでも抜けるように身構えて、その時を待っておった。
すると、隣りの囲炉裏端のあたりで、コトコト音がして、
「婆さんや、半殺しはまだか」
「もう少しだよ、お爺さん」
との声が聞こえて来た。
侍は肝(きも)をつぶして、
「いよいよ来るか。何の、こっちから踏み込んでやる」
と、刀を掴(つか)むやいないや、パッと隣の部屋へ飛び込んだ。それへ、お婆さんが、
「おや、お侍さん、もう起きたのかね」
と、のんびり声をかけた。
「ん?」
と思って、婆さんの手元を見ると、婆さんはしきりにスリバチで何かをこねている。
「はーて、何だかおかしな具合だな」
と、まるで狐に化かされたような顔で眼(まなこ)を点にしていると、婆さんは、
「何もないけんど、半殺しでも、ごっつぉすんべと思うてな」
といって、出来立てのぼた餅をひとつ、手に乗せて見せた。
「ははぁ、半殺しというのは、このぼた餅のことか」
侍は、少し気が落ち着いて、
「お婆さん、では、お手打ちというのは何のことかね」
とたずねると、
「はぁ、お手打ちかい。そいつは、家で作ったそばきりのこんだ。本殺しといえば餅のこんだよ」
江戸の侍は、これを聞くと一度に気が抜けて、ドシーンと腰をおろしてしまったと。
どんべすかんこねっけど。
初めて知りました(^0^)
侍がそんなことで腰を抜かすことがあり、わたしはそんなことはないです( 10歳未満 / 女性 )
びっくりした!
な~んだ( 10歳未満 / 女性 )
ドキドキします。挿絵が見やすいです^_^( 10歳未満 / 女性 )
ドキドキした。
むかし、新潟県の佐渡島では、ときどきとてもつもなく大っきな蛸が浜辺にあがってきては、馬にからみついたりして、悪さをしたそうな。あるとき、大佐渡の男が馬をひいて相川という賑やかな町まで買い物に出たと。
昔、あるところに爺(じい)さんと婆(ばあ)さんがあったと。 あるとき、婆さんが、爺さんに、 「もうそろそろ筍(たけのこ)が頭を出す頃(ころ)合いだんべ」 というたら、爺さん、 「そうだな。そろそろだな、明日の朝にでも様子見がてら採(と)りに行ってくるか」 というた。
「本殺しと半殺し」のみんなの声
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