民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 言葉の聞き違い・言葉遊びにまつわる昔話
  3. 鶴と亀

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

つるとかめ
『鶴と亀』

― 埼玉県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔々の大昔。
 あるところに鶴と亀とがあったと。鶴は大層(たいそう)べっぴんさんで、亀はドッシリとしていたと。
 あるとき、鶴と亀とが出会ったら、鶴は亀をとても頼(たの)もしそうに思えたと。それで鶴が、
 「亀さん、亀さん、私の聟(むこ)さんになってちょうだい」
と言ったら、亀が、
 「おれぁ、嫌だな」
と言うたと。

 
 「なしてぇ。足が長いからぁ」
 「いいや、足が長いのはいいけれど」
 「それじゃぁ、首が長いからぁ」
 「いいや、首が長いのもいいけれど」
 「そんじゃ嘴(くちばし)が長いからぁ」
 「いいや、嘴が長いのもいいけれど」
 「それじゃなして私の聟さんになるのが嫌なのぉ」
 「足が長いのも、首が長いのも、嘴が長いのも、なにもかもべっぴんだと思う。思うけど……」
 「けどなに」
 「うん」
 「なによ、はっきり言って」
 「わかった。あのな、おれたち亀は万年生きるもんだ。あんたたち鶴は千年生きるもんだ。あんたが千年で死んだら、残り九千年もおれはヤモメ暮らしだ。これはつらいぞぉ。だから、いっくらあんたがべっぴんさんでも、あんたの聟どんには、ようなれん」


 「そりゃぁ、まあ、そうだわね。そんなら、友達になってくれる」
 「それなら、願ったり叶ったりだな」
と、話し合って、鶴と亀は友達になったと。
 鶴と亀はどこへ行くにも一緒だと。あんまり仲が好(い)いもので、あやかりたい、あやかりたい言うて、あちこちの祝(いわ)い事に呼ばれるようになったと。
 鶴は千年、亀は万年といって、今でもめでたい、あやかりたいと言うているが、大昔、鶴と亀にはこんなことがあったんだそうな。

  おしまいチャンチャン。

「鶴と亀」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

悲しい

亀がヒビができたのがこんな理由で悲しいです

楽しい

昔、関西弁で、鶴はくちばしがあるので、お酒は飲めません年と、いい、亀は豆が、固くて?かめまんねん、せんねんとまんねんをかけた、笑い話がありましたが、しってるひとがおられたら、教えてください。( 70代 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

緋鯉の恩返し(ひごいのおんがえし)

むかし、あるところに貧乏な若者が住んでおったと。若者は川のそばに、小っぽけな田んぼを作って暮らしておったと。あるとき、雨が降り続いたので、田の水をは…

この昔話を聴く

上州のデーラン坊(じょうしゅうのでーらんぼう)

昔、昔、大昔、そのまた昔があったと。上州の信州境(ざかい)に、デーラン坊という大男がおったと。どんなに大きい男かというと、上州の妙義山(みょうぎさん…

この昔話を聴く

かしこ淵(かしこぶち)

むかし、陸前の国、今の宮城県にひとりの男がおった。ある日、男が谷川で魚釣りをしていたと。ところが、その日はどういうわけか一匹も魚が釣れなかった。

この昔話を聴く

現在884話掲載中!