民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 動物の恩返しにまつわる昔話
  3. ハチとサルとカメ

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

はちとさるとかめ
『ハチとサルとカメ』

― 大分県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志

 むかし。
 ある若者(わかもの)が旅に出た。そして道を歩いていたら、子供がハチに紐(ひも)をつけて遊んでいる。若者はかわいそうに思うて、
 「銭(ぜに)をやるから、そのハチをわしにくれんか」
と言うて、ハチを助(たす)けてやった。
 しばらく歩いていたら、また子供が大勢(おおぜい)よっている。近づくと、子供達がサルを縄(なわ)でしばっていじめていた。若者はかわいそうに思うて、
 「みんな、銭をやるから、そのサルをわしにくれんか」
と言うて、サルを助けてやった。

 
 また、どんどん歩いていたら、子供が大勢よっている。今度は子供達がカメを裏返(うらがえ)しにしていじめていた。若者はかわいそうに思うて、
 「みんな、銭をやるから、そのカメをわしにくれんか」
と言うて、カメを助けてやった。
 
 若者は、もう銭はみんな無くなってしまったが、それでも、てくてく歩いていると、長者(ちょうじゃ)の家の前に、立札(たてふだ)が立っていた。立札には、
 (大川の向(む)こうにあるナシを取ってきた者を娘(むすめ)の婿(むこ)にする)
と書いてあった。若者は、
 <なーんだ、そんなことか。よーし、わしがナシを取ってこよう>
と思うて出かけた。

 
 ところが、行って驚(おどろ)いた。なんと海のようなでっかい川だ。
 「こりゃ、だめだ。とても渡(わた)れん」
 そうしたら突然(とつぜん)、川の中からカメが現(あら)われた。若者はそのカメの背中にのると、なんなく大川を渡ることができた。
 ところが、見たこともないような大きなナシの木だったので、若者は、
 「こりゃ、だめだ。とても登れん」
 そうしたら、サルが現われて、チョッチョッチョッと木に登って、ナシを一つもいできてくれた。
 若者はそのナシを持って、またカメの背中にのると、大きな川を渡ってきた。

 
 そして長者のところへナシを持って行ったら、長者は、
 「そこに娘が三人おる。どれがわしの娘だか分かるか」
と、難題(なんだい)を出した。初めて見る上に、三人とも同じ着物を着ているから、どれが長者の娘だか分らん。若者が困(こま)っていると、ハチが一匹(いっぴき)飛んできた。そして、若者の耳もとで、
 「中の娘、ブーン。中の娘、ブーン」
と教えてくれた。若者が、
 「中の娘だ」
と答えると、その通りだったので、長者の娘の婿になることができた。
 それで、若者は、一生幸せに暮らしたそうな。
 情は人のためならず、とはよく言ったものだなあー。

  もうすこし、こめんだんご。

「ハチとサルとカメ」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

驚き

もうすこし、こめんだんご?

こんなおはなしも聴いてみませんか?

くじら長者(くじらちょうじゃ)

長崎県西海市の松島は西彼杵半島の西一キロメートル沖、五島灘に浮かぶ島で、江戸時代には捕鯨が盛んな島だった。この松島に与五郎という肝の太っとい鯨捕りが住んでおったと。与五郎は毎日、「どうかして、鯨がたくさん捕れる方法はないものか」と考えておったと。

この昔話を聴く

ねずみ浄土(ねずみじょうど)

むかし、あるところに爺(じい)と婆(ばあ)がおったと。あるとき、爺は山へ木を伐(き)りに行ったと。ガッキン、ガッキン木を伐って、飯時(めしどき)にな…

この昔話を聴く

ながし、みじかし

 むかし、あるところに母と三人の娘(むすめ)とが住んでおったと。  あるとき、隣(となり)からボタ餅(もち)をもろうた。  ちょうどお昼どきだったので娘たちは早く食べたくてならない。めいめい皿を持ってチャブ台に集まった。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!