民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 狐が登場する昔話
  3. ムジナとキツネの化けくらべ

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

むじなときつねのばけくらべ
『ムジナとキツネの化けくらべ』

― 新潟県佐渡 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志

 むかし、あったけど。
 狢(むじな)と狐(きつね)が、道でばったり会ったと。
 「狐どん、狐どん、ひさしぶりじゃのう」
 「これはこれは狢どん。本当にひさしぶりじゃ」
というているうちに、狐が、
 「どうじゃ、狢どん。二人で化けくらべをしまいか」
というと、狢も、
 「それはおもしろい。ひとつ、化けくらべをするか」
というた。それで、まずはじめに、狐がお宮さんの前で化けて見せることになった。

 
 しばらくして、狢が約束のお宮さんの前に行くと、道の真中(まんなか)に、うまそうなまんじゅうが落ちている。
<これはうまそうなまんじゅうじゃわい>
と思うて、あたりをキョロキョロ見回し、誰(だれ)もいないと分かると、まんじゅうをさっと拾って、パクリと口の中に入れた。
 そのとたん、
 「痛(いた)い、 痛い 痛い 。狢どん、わしじゃ、わしじゃよ」
と、まんじゅうが口を聞いて、狐の姿(すがた)になった。狐が、まんじゅうに化けていたわけだ。

 狢は、
 「これはすまん。腹(はら)がへっていたから、ついつい食べてしもうた。それにしても上手に化けたなぁ」
と感心していた。そうしたら狐が、
 「それじゃあ、この化けくらべはわしの勝ちじゃな」
 「いいや、まだ分からん。明日、この道で大名(だいみょう)行列をして見せるから、うまくいったら手をたたいてはやしてくれ」
狢はそう言うと、帰って行った。
 
 さて、次の日、狐は昨日の場所で狢の大名行列が来るのを、いまかいまかと待っていた。そうしたら、
 「下にー、下にー、下にー、下にー」
と向こうから大名行列がやって来る。おともの侍(さむらい)も沢山いて、見るからに立派な行列だ。
 狐は行列がそばに来ると、思わず道に飛び出して、
 「うまい、うまい、よう化けたなあー、狢どん」
と、手をたたいてはやしたてた。

 
 ところが、その行列は、本当のお殿(との)様の行列だったからたまらん。おともの侍がさっとやって来て、
 「無礼(ぶれい)な狐め、エーイ」
と、きりかかった。やっと身をかわすと、ギャンギャンないて、山へ逃げていったと。

 狢は、この日、本当の大名行列が通ることを前から知っていたんだとさ。
 
 いきがぽぉんとさけた。 

「ムジナとキツネの化けくらべ」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

ゆうれい井戸(ゆうれいいど)

 むかし、と言ってもそんなに古いことではない。君が小学生なら、君のお爺さんお婆さんにあたるお人が、まだ子供時代のころだ。

この昔話を聴く

和尚と小僧(おしょうとこぞう)

 昔、昔。あるところにお寺があって、和尚(おしょう)さんと小僧(こぞう)が二人おったと。  和尚さんは、毎晩(ばん)、小僧が寝(ね)てからの晩酌(ばんしゃく)が楽しみで、二合徳利(にごうとっくり)に酒を入れ、燗(かん)をして、  「ああ、よい燗だ、よい燗だ」 というて、グビリ、グビリやっていたと。

この昔話を聴く

蛇きのこ(へびきのこ)

 むかし、青森県の八甲田山(はっこうださん)の麓(ふもと)にひとりの男が住んであった。  男が山裾(すそ)の道を歩いていたときのこと。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!