民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 言葉の聞き違い・言葉遊びにまつわる昔話
  3. ドウモとコウモ

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

『ドウモとコウモ』

― 新潟県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭

 とんとむかしあったと。
 京都(きょうと)にドウモという素晴(すば)らしく腕のいい医者があった。一方、江戸(えど)にもコウモという、これまた素晴らしく腕のいい医者があった。二人は、
 「わしこそ日本一の名医(めいい)だ」
と言うて、ゆずらんかった。
 それで、どちらが名医か、ひとつ腕競べ(うでくらべ)をしようということになって、京都のドウモが江戸のコウモのところへやってきたと。
 ドウモが、
 「お前は切った腕をつなげるか」
と言うたら、コウモは、
「腕をつなぐことなど朝飯前だ」
と答えた。

 
 「そんならついでみろ」
と言うが早いか、ドウモは自分の腕をスパッと斬(き)り落とした。そしたら、コウモはあっという間にドウモの腕をついでみせた。傷あとが分からんくらい上手(じょうず)についだと。
 コウモが、
 「どうじゃ、これほど見事(みごと)にはお前には出来まい」
と言うと、ドウモは、
 「そんなこと、たやすいことよ」
と答えた。
 「そんならやってみい」
と言うて、コウモが自分の腕を斬り落としたら、ドウモはなれた手つきでコウモの腕をついでみせた。傷あとが分からんくらい上手だと。
 これでは勝負にならん。首を切ってつなごうということになったそうな。


 先(ま)ず、コウモがドウモの首を切った。頭がドテンと下に転がったと。周囲(まわり)で観ていた見物人たちが、
 「こりゃ、たいへんだ。江戸のコウモが京都のドウモを殺してしもうた」
と、大騒(おおさわ)ぎしだした。が、コウモは落ち着きはらって、
 「皆の衆(しゅう)、そんなに騒(さわ)ぐことはない」
と言うて、首を元の通りつないで見せた。
 ドウモが生き返ったので見物人たちはたまげて、さっきより大騒ぎだと。
 次は、ドウモがコウモの首を切り落とし、すぐに元通りにつないで生き返らせた。
 また、勝負なしだったと。

 
 それで二人は、
 「かわりばんこに首を切ったって、どっちが勝ってどっちが負けたかわからん。今度は、二人で一緒に首を切ってつないでみよう。それならどっちが速いか分かるじゃろう」
と言うて、ドウモとコウモは、一、二の三と掛け声をかけて、同時にお互いの首を切り落としてしまったと。
 ところが、両方一緒に首を落としたから、その首をつなぐ者がおらんようになった。
 ドウモとコウモは死んでしまったと。
 それからというもの、どうすることも出来ないことを『どうもこうもならん』と言うようになったそうな。

  いっちごさっけ 鍋の下ガリガリ。

「ドウモとコウモ」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

怖い

おたがいにくびをきりおとしてしまうなんて やりすぎ( 10代 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

菖蒲湯の由来(しょうぶゆのゆらい)

昔々、小さなお城があったと。そのお城に、それはそれは美しいお姫様があったと。夜更になると、毎晩、立派な若侍が遊びに来たと。お姫様のおつきの者は、どうも怪しいと、はかまの裾に針を刺しておいたと。すると若侍は、その針が刺さって血をたらしながら帰って行った。

この昔話を聴く

正月の歌詠み(しょうがつのうたよみ)

 むかし、むかし。あるところにお姑(しゅうとめ)さんと嫁(よめ)とお手伝いがいたと。  ある年のお正月に、お姑さんが…

この昔話を聴く

彦左と河童(ひこざとかっぱ)

むかし、瀬戸(せと)に彦左という力のめっぽう強い男がおった。ある夏の日、古池(ふるいけ)という大きな溜池の下手(しもて)にあるたんぼで一日じゅう草取…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!