民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 面白い人・面白い村にまつわる昔話
  3. 数字の手紙

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

すうじのてがみ
『数字の手紙』

― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、あったてんがな。
 ある年、天気がおかしなあんばいで、田んぼも畠(はたけ)も馬鹿(ばか)げに作(さく)が悪いだんが、村で寄り合いして、年貢(ねんぐ)をまけてもろうとて、役所に願い出ることになったてや。
 村の代表として、でく助ととんだ兵ェが行ぐことにきまった。
 二人は役所へ行って、ふところから書き付けを出して、
 「おそれながらお願いすます。村の、代表すて参りますた」
というた。
 役人が願書を見たれば、ただ、一から十までの字しか書いていないので、
 「これや、何だ」
と、きいたてや。したっきゃ、でく助、


 「おそれながら、おらがわけを話しますすけ、お願いすます」
というて前へ進み出た。役人がけげんな顔して見ている願書を、その前から指(ゆび)さして、
 「これや、こう読みますだ。
 『一(いち)は、いちいち語るも、二(に)は、にがにがしい。あとは、さん(三)ざんな仕(四)事(五)をすて、ろく(六)なことがない。質(七)ばち(八)おいても食(九)ていかんね。充(十)分の作(さく)も稔(みの)らん』

 
 ――とまあ、こんなわけらろも、年貢まけてもろうとの願書でござんす」
というて、役人の顔を見たら、役人は口(くち)をへの字にして聞いていた。
 「お前たちの願いのことはわかった。ちとひかえとれ」
というて、さらさらと書いた書付を二人にあずけた。
 「これを持っていけ」
といわれて、二人がその書付をみると、こんだ、逆に十から一まで書いてあるだけだ。


 「これは、なんでがんすか」
ときいたら、
 「こういうがんだ。よくきけ。
 『十(じゅう)分の作をとりながら、九(く)情を言うは嫌な八(やつ)。七(しち)をおくようなものは、六(ろく)なものではない。五(ご)ん語(ご)道断(どうだん)なることにて、四(し)ばりたいは山山(やまやま)なれど、三千世界(さんぜんせかい)の百姓は、二(に)っくいけれども、一度(いちど)は許す』

 ――と書いてある。のみこんだら、さっさと帰れ」 
 というて、追いはらわれた。
 でく助ととんだ兵ェは、年貢をまけてもらうどころか、願いに行ったことをやっと許されたがんだと。

 いきがポ―ンとさけた。

「数字の手紙」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

驚き

役人にうまいこと返されちゃったね。( 40代 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

大きな手(おおきなて)

 むかし、紀州(きしゅう)、今の和歌山県の有田(ありた)と日高(ひだか)の郡境(ぐんざかい)にある鹿ケ瀬峠(ししがせとうげ)というところへ、惣七(そうしち)という猟師(りょうし)が猪(いのしし)を撃(う)ちに行ったそうな。  いつものように犬を使って猪を追い出そうとしたが、その日にかぎって一頭も出てこん。

この昔話を聴く

地蔵むがし(じぞうむがし)

むがし、むがし。爺(じい)と婆(ばあ)どいであったど。貧乏(びんぼう)でな、正月来たども餅(もぢ)ひとづ喰(くわ)ねほどだけど。

この昔話を聴く

狼の忘恩(おおかみのぼうおん)

 むかし、あったと。  あるとき、狼、のどさ骨(ほね)ひっかげて苦しんでいたけど。  「ああ、せつねゃ。たれか、この骨抜いで呉(け)だら、うんと良(え)え物呉(け)るぞ。ああ、だれか頼(たの)む。」 て、狼、ウン、ウンうなって、しゃべったど。

この昔話を聴く

現在882話掲載中!