― 長崎県 ―
再話 関 敬吾
語り 井上 瑤
昔、あるところに屁放の十どんがあった。
旅に出て関所に差しかかると、役人が、
「貴様の商売はなにか」
と尋(たず)ねた。
「私は屁放(へへん)の十でござる」
と答えた。役人が、
「屁放の十ならへって見ろ」
というと、十どん、着物の尻(しり)スソをまくって尻(けつ)を出し、屁の口すぼめたり開いたりして、
〽︎ぷんぱらりん ごようの盃(さかずき) ひっきょきょんのきょん
とひった。役人は、
「これは面白(おもしろ)い。もうひとつやれ」
と所望した。
「しからば薙刀(なぎなた)をひります。
挿絵:福本隆男
ぷう … これは薙刀の柄(つか)でござる。
ぷつ … これは石突(いしづき)でござる。
ぷるっ、ぷるっぷる … これは柄に巻(ま)きついた籐(とう)でござる。これからいよいよ身をひります」
とやった。役人は驚(おどろ)いて、
「いやいや、それには及(およ)ばん、許してつかわすから、通れ」
とお許しがでて、無事(ぶじ)に関所を通ったと。
この屁放の十どんの他に、隣(となり)の村にも同じ屁放の十があった。
ある日、隣村の屁放の十と屁放(へへ)り較(くら)べをしょうと思って出かけた。行ってみると息子(むすこ)だけいて、親爺(おやじ)は畑仕事に弁当を持って出かけていて、あいにくと家にいなかった。それで癪(しゃく)に触(さわ)って、
「俺(お)ら隣(とな)りん村ん屁放の十だ。お前の親爺と屁放り較べをしたいと思うて来たがおられんから、戻(もど)られたら宜敷(よろしゅ)う言うてくれ。今日は折角(せっかく)来たのだから、ただでは戻(もど)らん」
と言うて、家の戸口が逆(さか)さになるように屁放り向けて帰ったと。
間もなく親爺が帰ってきて、この様子を見て息子に聞いたと。
親父(おやじ)大層(たいそう)怒って、
「今、どこに行きよるか」
と言うて、尻に杵(きね)を当てて吹き飛ばした。
すると、一里ばかり離(はな)れた所を歩いていた隣村の屁放の十に、ひどい勢(いきお)いでぶつかって、目えまわして倒(たお)れたと。
挿絵:福本隆男
こるばっかる ばんねんどん。
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昔、ある山間(やまあい)に一軒(けん)の家があって、男と女房(にょうぼう)とは暮(く)らしていたと。 家の前の道、ときどき、猟師(りょうし)たちが猪(いのしし)だの熊(くま)だの獲物(えもの)を担(かつ)いで通ったと。
むかし、あるところに貧乏な若者が一人暮らしておったと。ある冬の日、雉(きじ)が鉄砲撃(てっぽうう)ちに追われて薪木(まきぎ)を積み重ねたかこいにささっているのを見つけて、助けてやったと。
「屁放の十ばなし」のみんなの声
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