― 宮崎県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、日向(ひゅうが)の国、今の宮崎県(みやざきけん)の跡江(あとえ)に半ぴどんというとんちものが居(お)ったと。ある日のこと、跡江の半ぴどんが
「高岡(たかおか)には外記どんというほらふきが居るっちゅうなぁ。おれとどっちがほらがうまいか、いっぺん競(くら)べちみちくるるわい」
といって高岡の外記どんの家へほら競べに出かけたそうな。ついてみると、ちょうど家の中から小さな子どもが手に味噌漉し(みそこし)を持って飛び出て来て半ぴどんにぶち当(あ)たって転(ころ)がった。
「イテテテテ、やい、そんなところにつったってちゃ危(あぶ)ねぇじゃねえかい」
「ほい、こりゃおじさんが悪かった。すまんすまん。ケガはなかか」
「なか。おっちゃん誰な」
「ああ。ぼんぼんのおとっつぁんにちょいとな」
「あーん、あてちゃろか。おっちゃんもおとっちゃんと知恵競べじゃろ」
「あ、まーそんなところじゃな。うぉほん。ところでぼんぼんは、そんなものを持ってどこへ行くとな。味噌をもらいに行くとか」
「ちゃうわい。おとっちゃんが寝ちょるから、浜へ行ってこれでクジラでもとって食べてもらおうかと思ちょるとこじゃ」
「ほー」
半ぴどんはえらいかんしんしたそうな。
「子供さえあんげなうまいほらをふきよる。この分だとおやじどんはどんなほらふきじゃろか」
そう思うてだんだん不安になって来たと。それでもまぁ、会(お)うてみらにあわからんと、玄関(げんかん)へ入って行ったと。
「外記どん居(お)りゃるのおー」
「おー、居るぞ居るぞー」
「あんたは具合(ぐあい)が悪うて寝ちょるとじゃねぇか」
「何が、何が寝ちょるもんな」
外記どんはそういうて、ゴソゴソ出て来たと。
「おおー、もしや跡江の半ぴどんじゃねぇや」
「そうじゃ」
「おおー、やっぱり。そろそろ来るころじゃ思うちょった。まぁ、あがりなされ」
半ぴどんが座敷(ざしき)に上(あが)って、あいさつやら何やらかにやらすまして、いよいよほら競べが始まったと。
「外記どん。あんた近ごろ毎晩青竹かかえて出かけるそうじゃが、いったいどこへ行くとな」
「うん。おれはお月様をとりに行くとじゃが」
「へぇー、青竹でかあ」
「うん」
「お月様がとれるかいよおー」
「うん。いろいろ調べたら、霧島山(きりしまやま)に登って待っとって月が山の端(はた)にヘラッと出やったところを叩き落とすが、いっとうええちゅう事がわかった」
「へぇー。えらい太か事をいいよったなぁ」
「なんの。ところで半ぴどん、お前はこれからどこに行きなさるか」
「うん、おれはお前が落とす月の重さで、霧島山が倒(たお)れるといけんから、線香(せんこう)三本持ってつっぱりに行く」
こいぎりの話。
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昔、津軽(つがる)の泉山村(いずみやまむら)に喜十郎(きじゅうろう)ちゅう百姓(しょう)いであったど。 秋になって、とり入れが終わったはで、十三町の地主のどごさ、年貢米(ねんぐまい)ば納(おさ)めに行ったど。
「半ぴどんと外記どん」のみんなの声
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