新しいエンディングをつけよう。 「河童はその男を生き返らせて、新しい殿様にその男がなった。その男は、ちゃんと人を人として最後まで尊重する男であり、ちゃんと人がさきわい合う地域になりましたとさ。」みたいな。 そうしようよ。( 30代 )
― 熊本県天草 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
天草(あまくさ)の話ばい。
むかし、ある若者が富岡(とみおか)の殿(との)さんが城を築(きづ)くちゅうので、人夫(にんぷ)に使ってもらいたいと出かけて行ったと。
ところが、その男は体が小さかったもので、
「こぎゃん小さか男に用はなか」
ちゅうて、追い返されてしもたと。
若者はがっかりして家に帰る途中、川べりの道まで来ると、河童(がわっぱ)が出てきて、
「なんで泣いとる」
ときいたと。
若者が、これこれこういうわけだというと、
「それならば、お前の願いをかなえてやるから、おらの願いをひとつきいてくれ」
というた。
「河童の願いとは何だ」
ときいてみると、
「おらの家の中に、恐(おそ)ろしい八つ目の化けもんが棲(す)んでるもんで、夜もろくろく眠れない。それを退治(たいじ)してくだはり」
という。
「なるほど、して、お前の家とはどこだ」
ときくと、
「この道の下の淵(ふち)だ」
というので、若者は淵の中へ飛び込んだと。探し探し水の底を泳いでいたら、馬鍬(まぐわ)がひとつ沈(しず)んでいた。八本の鉄の歯が光るので、河童には恐ろしい化けもんに見えたのだったと。
若者が、それを持って水からあがると、河童はひどくよろこんで、
「今夜、家へ帰ったら力試しをしてみなはい。力持ちになっとるばい」
というたと。
若者は半信半疑(はんしんはんぎ)で家へ帰ったと。ひと眠りしてから起き、飯をうんと食べて、庭の大っきい石を試しにかついでみると、かるがると持ち上がったと。
そこで若者は、この大っきい石をひっかついだまま、地響(じひび)きをたてて歩いて、富岡の工事場(こうじば)へ行った。
殿さんに、もう一度、
「おれを人夫に使ってくだはり」
と頼んだと。
殿さんはたまげて、
「よし、使うちゃる」
というて、たいそう便利(べんり)に使ったと。
「それ、その石のけろ」
「それ、この木を運べ」
それ、それ、と、なんでもかんでもこの若者にいいつけたと。
ところが、さて城が出来あがってみると、殿さんはこの若者が恐ろしゅうなったと。
「こぎゃん力持ちは生かしておいたら危ない。殺した方がよい」
と、下来(けらい)たちに命(めい)じて、大きな穴を掘(ほ)らしたと。
そこへ若者を突き落とし、上から石を落したと。
ところが、若者はどんな大きな石でもポイポイと投げかえしてくる。
殿さんはこまって、今度は砂を流し込んだと。
これにはさすがの若者も力の出しようがない。砂に埋(う)まって、とうとう死んでしまったと。
むごか話じゃ。
新しいエンディングをつけよう。 「河童はその男を生き返らせて、新しい殿様にその男がなった。その男は、ちゃんと人を人として最後まで尊重する男であり、ちゃんと人がさきわい合う地域になりましたとさ。」みたいな。 そうしようよ。( 30代 )
縁があって富岡の事は知っており、確かに立派な城趾があることも知っていましたが、まさかこんな話が伝えられているとは驚きです。小高い山の上に建つお城なので、河童から力を貰ったこの男は、お殿様にとってはとても便利だったことでしょう。それにしても、築城のために力を尽くした男が最後には殺されてしまうとは、お話の語り手も言っていたように、なんとも可哀想な話です。その後に男を供養した等々の後談もないので、少し物寂しいですね。( 10代 / 男性 )
かわいそ。( 10代 / 女性 )
「河童から力をもらった男」のみんなの声
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