民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 伝説にまつわる昔話
  3. 弘法機

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

こうぼうはた
『弘法機』

― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、ある冬の寒い日に、破(やぶ)れ衣(ごろも)を着たひとりの坊(ぼう)さんが托鉢(たくはつ)に歩いていた。
 坊さんは、立派(りっぱ)な門のある家の前に立ち、お経を唱えた。
 家の中からは機(はた)を織(お)る音がキーパタン、キーパタンと聞こえてきている。
 この家(や)の奥方(おくがた)が二人の機織(はたお)り娘を使って、機を織らせているところだったと。


 奥方が、障子(しょうじ)を少し開け、門のところを見ると、いかにもみすぼらしい托鉢坊主(たくはつぼうず)だ。
 奥方は音を立てて障子を開き、
 「ちょいと、うるさいよ。この娘たちの気が散(ち)るじゃないの。どこか、他の家へ行ってやってちょうだい」
というた。


 坊さんが、門口(かどぐち)を立ち去ろうとして頭を下げたら、ちょうど足元を一匹の蛇(へび)が横切ろうとしていた。
 坊さんは、大きな声で、
 「こりゃァ、だれのじゃろう。ここへ帯締(おびじ)めが落ちとるが」
というた。
 
弘法機挿絵:福本隆男


 そしたら、家の奥方が、
 「それは私のだよ、拾っていったらしょうちしないよ」
というて、家から走り出てきた。
 お坊さんは、持っていた杖(つえ)で、蛇をはね飛ばした。そしたら、その蛇が奥方の首にキリキリッと巻(ま)きついて締(し)めあげたと。
 奥方は泣きながら
 「お坊さん、どうぞ助けて下さい」
というて頼んだと。お坊さんは、
 「七年、四国を廻って仏さんに頼みなさい。そうしたら解(と)いてやろう」
というた。


 その蛇は、カマで切ろうとしても、焼き火箸(ひばし)を当てても、何してもはずれなかったと。
 それで、その家の奥方は七年、四国を廻って、ようやく蛇をほどいてもらったと。
 この奥方が四国お遍路(へんろ)のはじまりだそうな。
 
弘法機挿絵:福本隆男


 このときのお坊さんは、弘法大師(こうぼうだいし)さんだったと。
 
 むかしまっこう猿(さる)まっこう 猿のつびゃぁ赤い。
 

「弘法機」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

人を見掛けだけで判断するなって事やな。助かった様で何より

驚き

托鉢を断られただけでこの仕打ち。名僧高僧と( 30代 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

大歳の火(おおどしのひ)

 昔、ある分限者(ぶげんしゃ)の家で沢山の女中を使っていた。その中に主人のお気に入りの娘(むすめ)が一人いたと。明るくて、まめまめ、よう働く娘(こ)であったと。

この昔話を聴く

狼の眉毛(おおかみのまゆげ)

なんとむかしあったげな。あるところに、分限者と貧乏人とが隣りあって住んでおったげな。貧乏人は、分限者から毎朝鍋を借りて来て鍋の底にこびりついているコ…

この昔話を聴く

節分の鬼(せつぶんのおに)

むかし、あるところに貧乏な夫(とと)と妻(かか)があったと。二人は、朝は朝星(あさぼし)の出ているうちに畑へ行き、夜は夜星(よぼし)をながめながら帰…

この昔話を聴く

現在885話掲載中!