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とうふのびょうき
『豆腐の病気』

― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、大豆(だいず)と大根と牛蒡(ごぼう)と人参(にんじん)とジャガ芋(いも)は友達だったそうな。
 
 大豆が出世して豆腐(とうふ)になったと。豆腐になったはいいが、いっつも水の中にいるもんで風邪(かぜ)を引いたと。
 そしたら、大根が見舞(みま)いに行こうと思って牛蒡を誘った。
 「ゴボウどん、ゴボウどん、豆腐が風邪をひいて悪いそうだが、お見舞いに行かんかよ。」
 「わしは、いんま、畠(はたけ)から戻ったところじゃきに、このとおり真っ黒で土だらけじゃきに、おまん先にいっちょっとうぜ。わしは後から行くきに」
 「そうか」
 って。大根は近所の人参の所へ行ったと。


 「人参どん、人参どん、豆腐が悪ろうて寝(ね)よるそうなが、見舞いに行かんかよ」
 「わしは、いんま、親類(しんるい)の法事へいっちょって戻ったところだが、酒を呑(の)みすぎてへばりこんだきに、後から行くきに、まあ先にいっちょっとうぜ。」
 「そうか」
 って。大根はしばらく行ってジャガ芋の家へ寄ったど。
 「ジャガ芋どん、ジャガ芋どん、豆腐が悪いっつうが、見舞いに行かんかよ」
 「わしは子沢山(こだくさん)で、この通り子にしがみつかれて何ともならんきに、まあ先にいっちょっとうぜ。」
 「そうか」
 って。
 大根は仕方なく、一人で豆腐の所へ見舞いに行ったと。

 豆腐は頭をしまだにくくって、寝ておったと。

 
 「豆腐どん、豆腐どん、病気だそうだが、どんなぐあいぜよ」
 「ああ、大根どんか。わざわざすまね。ヒックション。殻(から)を脱いだとたんに、どうにもこうにも……ヘッ、ヘッヘックショーン。この通りぐあいが悪くてどうもならん」
 ってみずっぱなをすすりあげて、ぷるん、ぷるん、ふるえるんだと。
 「早うマメ(元気)になれや、お医者さんはどう言うぞ」
と大根が聞くと、豆腐は、
 「医者は、風邪はなおっても、もとのマメ(豆)には、ようなおらん、いうた」
 こういうたと。

 むかしまっこう。 

  

「豆腐の病気」のみんなの声

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楽しい

子供にせがまれて別の本でこのお話を読んだけどオチの意味がよくわからなくて、こちらを読んだら納得できました!わかりやすく書かれててとてもいいと思う。( 40代 / 女性 )

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