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あめはどく
『飴は毒』

― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところに、とってもケチな和尚(おしょう)さんがおったげな。
 カメに水飴(みずあめ)を入れて、ひとりでなめているんだと。小坊主(こぼうず)が、
 「私にも」
と言えば、
 「これは毒じゃ」
と、仏壇(ぶつだん)の下にかくすんだと。

 あるとき、和尚さんが、檀家(だんか)に法事があって行くことになったと。そんで、
 「あの仏壇の下の戸を開(あ)けたらおおごとぞ、あっこにゃぁ、毒を置いちゃるけ」
 言うちょいて、出ていったげな。 

 
 和尚さんが出て行くと、じきに、かしこい小坊主が、和尚さんが一番大事にしよる牡丹(ぼたん)の鉢(はち)を、板の間へぶっつけて割ったと。
 そしたら、他の小坊主らがびっくりして、真(ま)っ青(さお)になったと。
 けんど、その小坊主は平気のへいざで、
 「さあ、これから、あの仏壇の下の水飴をなめようや」
  と言うて、みんなを連れて行って、指をつけては、
 「うまい、これはうまい」
 ちゅうて、なめてしもうたと。
 そうしているうちに、和尚さんが戻って来てみると、あの大事な牡丹の鉢が割れちょる。
 真っ赤になって、
 「この鉢を割ったのは、いったい誰ぞ、ここへ出てみよ」
 言うて怒ったげな。


 そしたら、かしこい小坊主が、和尚さんの前へ出て、
 「私が、和尚さんの大事な大事な鉢を割りました。死んでおわびをしょうと思うて、仏壇の下の毒をなめてみましたが、まだ死ねません。けれど、もうじき毒が身体にまわって、じき死ぬろうと思いますけ、どうぞ、こらえてつかっさい」
 言うて、涙をポロポロ出して、泣きじゃくったげな。
 他の小坊主も、水飴をなめたけんど、自分ひとりがなめたように言うて、罪をかぶったと。
 和尚は、どうも芝居(しばい)くさいと思うたが、いまさらあれは水飴じゃ、とも言えんで、ハツタイ粉を作って、
「解毒(げどく)の薬じゃ」
ちゅうて、小坊主に飲ませたげな。
 こげなかしこい小坊主じゃったけに、後には、たいそう偉い坊さんになったそうな。
 
 むかしまっこうたきまっこう
 たきからこけて猿のつびゃぁ
 ぎんがり。

「飴は毒」のみんなの声

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