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ひばりかねかし
『雲雀金貸し』

― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、むかしの、大昔。
 あるところにヒバリがおって、金貸しを商売にしておったと。
 お日さまにお金を貸して、だいぶん日が経ったので、催促(さいそく)に行ったと。
 「いつかの銭(ぜに)コ、よこせ」
 そしたら、お日さまは、
 「そんなにせかすな、今にやるから」
 って、雲の中にかくれてしまったと。

 秋になって、ヒバリは、また、お日さまのところへ行って、
 「いつかの銭コ、よこせ」
 って言ったら、お日さまは
 「あとでやる、あとでやる」
 って、黒雲(くろくも)ひきよせて、雨をザアザアふらせた。

 
 ヒバリは、羽をぬらして、すごすご帰ったと。
 そのうちに冬になって、寒雪(さむゆき)がふる、寒風(さむかぜ)が吹く。ヒバリは、ぶるぶるふるえて、野っ原(のっぱら)の巣の中でちぢこまって、催促にも行けないでおった。
 間もなく正月がきて、ヒバリは、正月じたくにお金を使って、一文なしになったと。
 やっと春になって、寒雪もふらなくなり、寒風も吹かなくなったので、このときとばかりに、ヒバリは、空へのぼって行った。
 「いつかの銭コ、よこせ」
 「貸した金、よこせ」
 って言ったら、お日さまは、
 「まあんだかえせん。まあんだかえせん」
 って、カンカン照らして、高く、高く、どんどん、どんどんのぼっていってしまったと。


 ヒバリは
 「あちち、あちち」
 って、羽をこがしてもどったと。
 ヒバリが、春になると、まっすぐ空へあがって、声高(こわだか)に呼ばっているのは、昔貸した金のことを忘れられずに、今もって、お日さまへ催促しているからなんだと。
 「貸した金、よこせ。さぁよこせ、よこせ」って。

 どっとはらい。 
 

「雲雀金貸し」のみんなの声

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