民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 草木の話・動物の由来にまつわる昔話
  3. 豆と炭とワラ

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

まめとすみとわら
『豆と炭とワラ』

― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかしむかし、あるところにお婆さんがおったと。
 お婆さんは、豆を煮ようと思って、空豆を水につけておいたと。柔らかくふくれたころ、鍋にザランとうつしたのだが、一粒だけコロコロこぼれて、庭の隅まで転がって行ったと。
 お婆さんは、こんどは、たきつけのワラをとりに行った。すると風がフイと吹いて、一本のワラが飛んで、庭の隅の空豆のそばに落ちたと。
 お婆さんは、それからかまどに火を燃やし、豆をコトコト煮ていると、真赤な炭がはねてさっきの豆のそばに飛んで行った。
 そら豆と、炭と、ワラは、三人でお伊勢参りに出かけたと。
 

 
豆と炭とワラ挿絵:福本隆男
いくがいくが行くうちに、小さい川にぶつかった。が橋が無い。困ったなあ、と考えていると、ワラが、
 「うん、これがいい。わしが一番長いすけ橋になってやる。お前さんらが先に渡ってけや。それからわしを向こう岸へ引き寄せてけれ」
 「せば、そうしてけれ」
 いざ渡る段になると、空豆と炭が、
 「わしが先」「おらが先」
 と、けんかを始めた。空豆が負けて炭が勝ったと。 


 炭がブスブス言いながら、半分ばかり渡った頃、そら豆が「早よ渡れ!」と、けしかけたので、こんど炭はカンカンになっておこった。
 たまらないのは、橋になっているワラだ。熱くて熱くてたまらない。アチチチ・・・と言いながら、とうとうワラは焼け切れてしまったと。
 炭とワラは、ジュッと声をたてて流されて行く。
 これを見た空豆は、おかしくてたまらない。
 「さっきの罰だぁ」
と、大声で笑った。あんまり笑いすぎて、腹がパチンと裂けてしまったと。困って泣いていると、そこへ裁縫屋が通りかかった。

 
 「空豆や、なんで泣いている」
と、尋ねたが口もきけない。
 「こりゃ、かわいそうに」
と、黒糸で縫ってくれたそうな。
 ほれ、空豆の腹のところが黒くなっているじゃろが、あれはその時のあとなんだと。

 どんとはらい、ほうらの貝こぽうぽうと吹いた。  

「豆と炭とワラ」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

イソップ童話に同じ話があるそうなのですが、元々は岩手に伝わる話なのですか?( 40代 / 女性 )

感動

楽しい!( 10代 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

榛名湖の腰元蟹(はるなこのこしもとがに)

むかし、上野(こうずけ)の国、今の群馬県(ぐんまけん)の榛名山(はるなさん)のふもとに立派(りっぱ)な館(やかた)があった。館にはひとりの可愛らしい…

この昔話を聴く

火車猫(かしゃねこ)

 むかしあったんですと。  火車猫(かしゃねこ)というのがあったんですと。  火車猫というのは猫が化けたものですが、なんでも、十三年以上生きた猫が火車猫になると、昔から言われています。

この昔話を聴く

爺さんと狸物語(じいさんとたぬきものがたり)

明治から大正の頃のようじゃが、池の集落に、宮地というお爺が居って、いってつ者であったと。 楽しみといえば、中央の池に出て、鯉や鮒、鰻などを釣ってきて、家の前の堀池で飼い、煮たり焼いたり酢にもして晩酌の肴にしていたそうな。

この昔話を聴く

現在884話掲載中!