いくら何でも何で、 カラスやフクロウ になる。 ( 10歳未満 / 女性 )
                                ― 兵庫県 ―
                                
                                                                                                                                                        語り 井上 瑤
                                                                                                                                                                再話 六渡 邦昭
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                
                            
                             昔、あるところに染物屋があったと。
 この家の息子は仕事もせんと遊んでばっかりの極道者(ごくどうもん)だったと。
 あるとき、お城のお侍(さむらい)が白絹(しろぎぬ)を持ってきて、
 「十日ほどしたら、お殿様が江戸へ上(のぼ)らっしゃる。それまでに、これを紋服(もんぷく)に染め上げてくれ」
というた。染物屋の主人はかしこまって、ひきうけたと。 
                            
                
 
 主人がその白絹に下地を練り込み、乾(かわ)かしていたら、極道息子が酔っぱらって帰ってきて、 「へん、こんな物染めて、いったい何ぼになるんじゃい。川(かわ)ん中這(は)いつくばって、冷(つ)めてえ思いして、洗って干(ほ)して、へん、いまだに貧乏じゃねえか。俺みたく、バクチでもすりゃ、銭なんて、面白おかしく出来るのによ」
というて、その絹地に泥を塗(ぬ)りつけた。
 白絹(しろぎぬ)は、どうにもならんほど汚(よご)れてしまったと。 染物屋の主人が、なく(泣く)なく洗いなおして、乾(かわ)かそうとしたら、雨が降ってきて、それから何日も降り続いて、とうとう約束の日が来たと。
 
 お城から使いが来て、
 「注文の紋服は、出来とるか」
というた。
 出来とらん。殿様は怒って、
 「不埒(ふらち)な奴だ。討ち首にせい」
というた。
        
                            
                            
 染物屋の主人は、殺されたと。
 極道息子は、ことのなりゆきにおろおろして、父親の死骸(しがい)に取りすがって泣いたと。
 極道息子は、家にいても、外を歩いていても、近所の子供らに寄ってたかって、石を投げつけられたり、棒で叩かれたり、身の置き所がないようになったと。
 極道息子は、くやんでくやんで、とうとうフクロウになったと。 
 フクロウになって、人目につく昼間は林の中に隠れていて、夜も暗くなってから出歩くようになったと。
 それで、フクロウは、今でも空模様がお天気になると、
 「糊(のり)つけ乾(ほ)うせ、糊つけ乾うせ」
と啼(な)き、雨が降ると、
 「泥つけ乾うせ、泥つけ乾うせ」
と啼いているのだと。 
                            
                
 
 極道息子をこらしめているうちに、いじめることが面白くなった近所の子供らも、カラスになったと。
 カラスになった子供らは、今でも、薄汚れたボロを着て、秋は腐れ柿食って、昼間、フクロウを見つけると、寄ってたかって、痛めにかかるんだと。
 そうだといや。
 
        
                            
いくら何でも何で、 カラスやフクロウ になる。 ( 10歳未満 / 女性 )
ニートはいずれフクロウになってしまうのか…(´・ω・`)( 20代 / 男性 )
いじめるなんて…( 10歳未満 / 女性 )
ごくどうむすこより、じいがかわいそう( 10歳未満 / 男性 )
むがし、父(てで)と母(あば)と子供(こども)の三人居(い)てあったわけだ。 貧乏(びんぼう)で貧乏で、正月来たて食う物なも無(な)ぁふでナ、銭(じぇん)コはだけて、 「今夜年取りだんて、米コ買って来て、飯(まま)炊(た)いて食うど」 どで、その子さ、米買わせに行かせた訳(わけ)だ。
「梟とカラス」のみんなの声
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