とっても良かった。( 10代 )
― 青森県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
むかし、戦国の世には、日本のあちこちでいくさがあった。
力の強い者が力の弱い者をほろぼして、自分の領土をどんどん広げていった。
だけれども、力は弱くても、山の上に城を持っていれば、なかなか、いくさには負けなかった。どこから敵が来てもすぐに分かるし、矢を射たり、石を投げつけたりして、防ぐことができる。
陸奥(むつ)の国、青森県に、大茂城(だいもじょう)という山城(やまじろ)があった。
あるとき、隣りの国の南部弥太郎(なんぶやたろう)が大軍でせめてきた。
それでも大茂城では、山の地形を利用して、南部勢(なんぶぜい)を防いでいた。
ところが、山の上にある城だから、井戸の水がでない。おまけに、ここのところ雨も降らなかったから大変だ。
何日も城にたてこもっているうちに、城に蓄(たくわ)えてあった水も、だんだん無くなっていった。
それを知っている南部勢は、
「水が無くなれば、我(わが)軍の勝利だ」
といいあい、城を遠まきにして見守っていた。
ある日のこと、南部の見張りが大茂城の様子をうかがっていると、不思議なことが起った。
水が無いと思っていた大茂城では、ザァーザァーザァーザァーと水をぶっかけては馬を洗っている。
見張りがさっそく、南部の殿様に報告すると、殿様は考え込んでしまった。
「うーん、敵に水さえ無くなれば、いっきに攻めほろぼすつもりであったが、水で馬を洗うとは、きっとどこかに水の出る所があるに違いない」
しかたなし、城を攻め落すのをあきらめ、引きあげようとしたとき、一人の老婆に出会った。南部の殿様は、
「これ、これ、大茂城には、どこか水の出るところがあるのか」
と聞いてみた。老婆は、
「いーや、あの城には水の出る所などありゃぁせん」
「でも、城の中では、水で馬を洗うておるというではないか」
挿絵:福本隆男
老婆は、ハッハッハッハッと高く笑うと、
「ようく見なされ、あれは水ではなく、白米じゃ。雀(すずめ)がチョコチョコついばんでいるのが何よりのあかしじゃ、馬を白米で洗うて、水のように見せかけているわけじゃよ」
南部の殿様は、老婆のことばにハッとした。
「そうだったのか、うまうまとだまされるところであった」
というが早いか、大声で、
「ものどもー、よーく聞け、大茂城には水が無いぞ。相手は弱っている。今こそ、あの城をせめおとせ」
と、号令をかけた。殿様のことばに勢いづいた南部の軍勢は、それーっとばかり、大茂城へ押しよせた。
水が無くて身体が弱りきっていた大茂城の軍勢は、戦う気力など、ありゃぁせん。あっという間に大茂城は落ちてしまった。
それからというもの、城の秘密(ひみつ)を教えてしまった老婆の家では、皆、早死にをするようになった。
人々は大茂城で死んだ者達のたたりだろうとうわさしたと。
とっても良かった。( 10代 )
むかし、ある村に爺(じ)さまと婆(ば)さまがおったと。 あるとき二人で大根の種を蒔(ま)いたら、秋になってどこのものより育(おが)ったと。 爺さまと婆さまが大根を掘(ほ)りに畑へ行ったら、とりわけ一本、今まで見たこともない大きな大根があった。
「白米城」のみんなの声
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