怖い話じゃないような( 男性 )
― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところにお寺があって、その門前に貧乏(びんぼう)な夫(とど)と嬶(かか)が暮(く)らしておっだど。
あるとき夫が遠くへ旅に出掛(か)けたど。そして、とある長者どのの家さ、金持ちになる弟子にして呉(く)ろと頼(たの)んだど。長者どのは、
「ええども、ええども、そんではここで働いてみれ」
ど、置いてくれたど。
まづ、先の三年は山さ入って、松の根っコ掘(ほ)りばかりさせられ、後の三年はその掘っだ根っコを割木(わりぎ)にして、くる日もくる日も町さ売りにやられだど。
六年の間を辛抱(しんぼう)しだら、長者どのは、夫に松の根っコを売っただけの金をみんなくれで、
「金持になる修行(しゅぎょう)はこれでいいがら、家さ帰って家業をやれ」
といってくれだど。
夫が喜んで村さ帰っで来るど、留守(るす)の間にお寺の和尚(おしょう)が、嬶のどころさ通っで無理難題(むりなんだい)を持ちかけで困(こま)っているどいう噂(うわさ)を小耳にはさんだ。
これは、と思っでそろっど家に近づいてみるど、やっぱり和尚が来でいで嬶に何事か無理難題を言っている様子だ。
夫は、外からわざと大きな声で、
「かか、かか、俺(おれ)だや、今帰った」
どいったど。
和尚はどでして、そこにあっだ空の水ガメの中さ飛び込(こ)んだど。
夫は知らん振(ふ)りしで家さ入って行き、
「かかや、かかや、俺は六年も他所(よそ)さ行っで辛抱して来たども、銭(ぜに)一文身につけて来なかっだ。お寺さまさ何にも手土産ないがらこれもってくべな」
どいっで、和尚の隠(かく)れたカメさ、菰(こも)をぎっちりどかぶせて縄(なわ)しばりをし、かついでお寺さ行っだど。
そして、和尚の嬶さんの前さ、どんと下ろしで、
「これ手土産でがんす」
どいっだど。和尚の嬶さんは、
「そんたな小汚(ぎた)いカメなど、おらほでは要らん。とっどど持って帰ってくれ」
どいったど。夫は、
「はぁ、そんではしかたないがら、沢(さわ)さでも捨(す)てで来ますべが。その前に、ちょっと手洗(ちょうず)貸して呉ない」
どいっで、便所さ行く振りしで、耳そばだてだど。
そしたら、カメの中から和尚が、
「嬶、嬶、このカメはただのカメではない。和尚飛び込みのカメどいっで、えらい宝(たから)ガメだから、十両もやっで、まづまづ貰(もら)って置いで呉ろ」
どいっているだど。
それがらというものは、和尚も懲(こ)りで夫の嬶に無理難題つけに来なぐなったし、嬶も晴々ど夫ど暮らせるようになったので、いい身代の家になっだど。
どっとはらい。
怖い話じゃないような( 男性 )
あきらめずに頑張れば、いいことがあると思いました。お金持ちになって、しあわせに暮らせるようになってよかった。( 10歳未満 / 男性 )
むかし、加藤清正(かとうきよまさ)が戦で朝鮮(ちょうせん)に行ったときのこと。 陸上では負けしらずの戦いぶりであったが、海上では日本の水軍が負けた。海上封鎖(かいじょうふうさ)されたので、日本からの補給(ほきゅう)がなくなったと。
昔、あるところに、それはそれは豪胆(ごうたん)な百合若大臣(ゆりわかだいじん)という武将(ぶしょう)があったと。百合若大臣は、ひとたび眠れば七日間も眠り続け、起きれば七日間も起き続けるという人であったと。
「和尚手土産」のみんなの声
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